2026/03/06 09:30

【有村佳奈】

ウサギの仮面をつけた女性をモチーフにした絵を中心に描き、『現代を生きる乙女の生と死』の表現に取り組んでいる。2024年にパリでの初個展が開催、台北での展覧会に参加等、海外での活動の場が広がっている。2024年に女子美奨励賞を受賞。2025年に個展「Real」をtagboat(東京)で開催。その他、本の装画等のイラストレーションも行う。

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~INTERVIEW~

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Q.第2弾は昨年の個展『Real』にて展示された作品を中心にコラボさせていただきました。この個展『Real』について経緯や想い、個展を終えての感想などをお聞かせください。
個展「Real」は、SNS上でのAI批判をきっかけに、「本物らしさ」や“完璧さ”への違和感から出発した展覧会でした。AIによって瞬時に画像が生み出される時代に、自分にとっての“リアル”とは何かを考えたいと思い、制作を始めましたが、制作中には私生活で感情が大きく揺れ動き、描き始めた時と完成時では、作品に込める思いも変化しました。その変化こそが、「時間をかけて描く意味」だと実感しています。この展覧会を経て、AI時代におけるアートの意義を自分自身に問い直す機会になりました。あらゆるものが加速する現代において、立ち止まり、脳を休ませる時間を与えるアートは、ひとつの“処方箋”になり得るのではないかと感じています。

Q.「#フラットランド」について、制作背景と作品のメッセージを教えてください。また、2023年の作品のアップデートとも拝見しましたが、そちらについてもお聞かせください。
「#フラットランド」を最初描いた2023年頃、私たちは「たくさんの自分」を抱えて生きているのではないかと考えるようになりました。仕事の自分、家庭の自分、SNSの自分。それぞれの場所で、少しずつ異なる“自分”を生きています。昔から存在していた感覚かもしれませんが、SNSの登場によってその分裂はより拡大しているように思います。この状況が、今後の私たちの生き方にどんな影響を与えるのか――その問いを軸に描いた作品です。表現としては、別の自分になっていく感覚を「次元が変わる」ようなイメージで捉え、カラフルな世界と白黒の世界に分かれる構図にしました。2025年のアップデートでは、線画だった花びらに色を加えました。わずか2年でも、自分自身も社会も確実に変化している。その時間の流れを作品に反映させたかったのです。

Q.「make up」について、制作背景と作品のメッセージを教えてください。
「make up」は、日常の中にある小さな幸せを丁寧に感じ取る友人をモデルに制作しました。大きな出来事ではなく、「いま、この瞬間」を慈しむ気持ち。その静かな幸福を描いた作品です。

Q.「私の消失」について、制作背景と作品のメッセージを教えてください。
この構図は、2020年頃から定期的に描きたくなるモチーフのひとつです。テーマは「消失と再生」です。自分を消していくような絵になっていますが、どちらかというと、考えや自己をリセットさせたりする感覚について考えを巡らせたくて描いています。

Q.前回制作時のお話をお伺いした際に、絵のイメージに合うモデル様を撮影してから絵に起こしていくと仰っていました。この制作工程に至った経緯と作品への影響をお聞かせください。
2018年頃、「憧れ」をテーマに、海外の女性を雑誌写真からコラージュ的に描いたことがありました。ドイツの現代美術家ゲルハルト・リヒターの“フォト・ペインティング”から着想を得た手法です。しかし、現代のSNSでは、意図と異なる形で切り取られれば、模写が著作権の問題に発展する可能性もあります。それは制作者として本意ではありません。そこで、モデルについてより慎重に考えるようになりました。現在は「現代の乙女」をテーマに、実際に会った女性を撮影し、その対話を通して作品へと昇華しています。撮影の時間は、彼女たちの声に耳を傾ける大切なプロセスにもなっています。

Q.以前のインタビューで「制作時の着想」についてお伺いした際に、”常に「いま自分が何に心を揺らしているか」に意識を向けている”と仰っていました。今、”心を揺らしているもの”はなんですか?
いま考えているのは、人間の「欲」についてです。欲は人を悩ませますが、同時に生きる力にもなります。以前、ファッションが大好きだった親戚が、高齢になって「欲しいものがなくなった」と話していました。一見、悟りのようにも思えますが、同時に見ていると、生きる意欲も薄れているように感じ、言葉にしづらい不安を感じました。一方で、SNSでは過剰な「欲」が前面に出ることも多い。それが最善とも限らない。欲と生きる意欲の関係について考えています。

Q.前回”詩”を作られる際のインスピレーションについてお伺いした際に、「絵を描いていた時の自分と答え合わせする気持ち」と仰っていました。絵を描く時は直観的に、詩を考える時は対話しながら整理していく感覚なのでしょうか?
絵を描いているとき、私は必ずしも「なぜこの絵を描いているのか」を完全に理解しているわけではありません。制作では、理論と同時に直感も大切にしています。描いている最中は自由に、リラックスして感覚を優先します。そして完成後に、あらためて作品と向き合い、自分自身と対話するように言葉(詩)で整理していきます。詩を書く時間は、絵を描いていたときの自分と“答え合わせ”をするような感覚に近いですね。


▷【有村佳奈氏】アーティスト紹介ブログ【第1弾】はこちら
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